第30回
勝手

表の「玄関」に対して、台所などの家事のために使用される裏口をこう呼びますが、昔はここから御用聞きを迎えたり、ご近所さんとのコミュニケーションにもひと役買ったそうです。
現在もゴミを出したり、食料品や暖房用の燃料を搬入したりとあれば何かと便利な設備といえますが、そもそもなぜ「勝手口」と呼ぶのでしょう?
まず、「勝手」とは台所のこと。
「勝つ」「手」というのは、実は弓道からきている言葉で、
一般的に弓を持つ左手を「押手(おしで・おして)」と呼ぶのに対し、
右手は弦をかけて引っ張り耐える(=勝)ので「勝手」と言います。
左手に比べると多少自由が利く方の手として呼ばれたことから、
「自由が利く(勝手が利く)」という意味でも使われるようになりました。
さらに、昔は女性が自由に使えたのは台所と裏口だけ。
だから「勝手」「勝手口」と呼ぶようになったのです。
また、江戸幕府では台所(経済)をあずかる役所を勝手方と呼び、政務の公事方と区別していました。

「勝手に切る」とは、材料など正確さをあまり気にせず切ること、
「仕勝手」とは、(施工・工事などを)しやすいようにすること、
などがあります。
今や住まいの中でリビングと同様、中心的な存在になっているキッチン(勝手)。
昔のような裏方なイメージは全くありませんよね。